大型デパートやショッピングモールはおろか、高層ビルも目に当たらない街並みは「都会」のイメージとはかけ離れているとはいえ、駅前の商店街には松屋や日高屋などのチェーン店や昭和から続いてきた個人商店が軒を連ねて、人通りも絶えず、何もない田舎のような寂しい感じではありません。

 

【上】一人暮らしの自炊派なので、八百屋を見かけるとつい値段チェックとかしちゃいます(笑)駅前のこのお店はよく整理整頓されていて、コスパも高そうで近所にあってほしいですね!
【左下】駅から徒歩5分のところに「マルエツ」があります。規模が小さく品揃えが足りなさそうなので、
食料品の調達は山手通り沿いにある激安スーパー「みらべる」(駅から2分)【右下】でしたほうがいいのかも。
25時まで営業しているので、帰りが遅くても心配ないですよね。

そして特筆すべきなのは、
この商店街の一部は2006年に公開された大ヒットアニメ映画
『時をかける少女』のモデルでもあること。
今や「バケモノの子」などの話題作を出し続けている細田守監督ですが、
その人気の原点ともいえる作品だからこそ、
ファンには意義深いはず。

 

 

そのほかにモデルとなったスポットーー「哲学堂公園」の野球場(駅から徒歩22分)や、「林芙美子記念館」の屋敷(駅から徒歩4分)、南口附近の踏切なども近所にあり、道を歩いていると、時にはアニメの世界に飛び込んだような不思議な感覚になって、面白いです。

 

舞台探訪も楽しいですが、
今回中井を訪れる一番の目的は、
年に一度の大イベントーー
町全体をギャラリー化する「染の小道」のに参加するため

 

実は、この辺は江戸時代から染色(せんしょく)業が盛んでいて、昭和30年代までは京都と金沢と並び、染めの三大産地だったそうです。そしてそのカギとなったのは、周辺に多くある「落合」という地名で示した通り、この地域で「落」ち「合」う水質が綺麗な妙正寺川と神田川だったということ。

その歴史を語り継ぐため、2009年から毎年2月末に「染の小道」という町全体で盛り上がるイベントが3日にわたって行われていましたが、去年はコロナ禍でやむなく中止になってしまいました。そのため、今年は例年より規模が約半分に縮小したものの、やってくれるだけでとてもありがたいと思いました。

 

その中でどうしても見たかったのは、特別感たっぷりな「川のギャラリー」。

色とりどりの反物(たんもの)が川面にかけられている光景が目撃できるなんて、ただでさえ興奮していたのに、幅36〜40cm・長さ12〜13mの反物が目の前に続く絶景は、写真で見たより迫力があって、当時300にも及ぶ染色の職人が川沿いで染め物を洗ったり干したりする盛況に思いを馳せるとさらに感慨深く、終始ワクワク見ていました。

 

 

 

写真だけでは伝えきれないだろうと思うので、動画を編集しておきました(*’ω’*)癒される水の音と一緒にご堪能ください♪

 

 

個人的に、陽射しで輝いた水草がゆったりとした川の流れに揺れる光景や、反物が水面に映り込む鮮やかな反射、そして反物が踊っているかのように風に揺れる様子は一番心が和み、いくら見ても飽きませんでした。

その平和な雰囲気を伝えるために、やや長尺で編集しました。心が疲れてしまったときには特に癒し効果があるのかもしれません(*’ω’*)👇

 

宝探しのような「道のギャラリー」も結構楽しめました

 

スタンプを集めるカードを渡されると、その店に何回か足を運びたくなってしまいますよね?たぶん人間って、そのように「○○集め」といったことに惹かれやすい生き物だと思います(笑)。

それと同じく、街中の店舗の軒先に飾られた、作家や学生の手によって生まれた「のれん」のマップを渡されると、一軒一軒訪ねざるを得ないのです。

学校、または区民センターのような一か所で展示するより、そのほうが宝探しのようなワクワク感を与えるし、探っているうちに、町の全体像も知らず知らず掴めるようになり、親近感が湧いてくるので、よく企画したなあと感心しました。

 

▲ネットで照会しながら見つけやすいグーグルマップ版もあって用意周到です。

 

この企画がスタートした2011年には参加店舗は51軒しかなかったのに、今は100以上まで成長してきました。コロナ禍の影響で今年は95に減少しましたが、「染物屋だけでなく地域の人みんなのためのイベント」という感覚は依然として強く感じられます。

 

 

しかも、店舗や銀行などはただ「場所を貸して」展示させるのではなく、作り手が店側と話し合ったうえで、その場所に相応しい作品に仕上げたのです。そのような町と密接した「ギャラリー」はより興味深く、じっくり見ておきたいと思わせるので、とても素敵だなと思いました。

 

 

全部ではないですが、たくさんののれんの様子が収まった動画はこちらです👇

 

そうやって小さな路地も含めて
あちこち見回っていると、
気になるお店にちらほら巡り合えました。

 

 

見た限り、お店は大半「ザ・昭和」を感じさせる喫茶店や居酒屋で、地元の常連客で賑わっていましたが、そのなかに有名人も交ざっていたようです。

その一人は、「天才バカボン」や「ひみつのアッコちゃん」で国民的な人気を博し、「ギャグ漫画の王様」と謳われる漫画家・赤塚不二夫でした。

実は、先生が生前最後の歳月は中井で過ごし、「白雪鮨」や「洋食の店 ぺいざん」など自分の行きつけのお店をよく作品に登場させ、事務所「フジオ・プロダクション」も中井で構えていたとか。先生の「中井愛」が垣間見えるのですね!

 

 

というわけで、中井は先生のファンにはたまらない町であること間違いなしですが、先生の漫画を読んだことのない私は逆に町を回ったあと、読んでみたくなりました。そういう相乗効果もいいですね~(笑)

 

中井で人生の最後を過ごした有名人はもう一人いました。
日本を代表する女性作家
林芙美子(はやしふみこ)」先生です。

 

「放浪記」や「浮雲」などの作品を持つ林芙美子先生が亡くなるまでの10年間、家族と過ごした屋敷は今や記念館となって、「道のギャラリー」の1番目でもあります。

普通は150円の入場料がかかりますが、「染の小道」というイベントとコラボしたためか、80円となって、「やったー」と思いました(^O^)/

 

 

川がこの辺で合流するというのは、地形が谷底のようで、坂が多いことを意味します。そうした坂の先には高級住宅街の高台があって、全く違う風景が広がっているわけです。古くから庶民が集まる下町ってこんなものなんですね。

それをマイナスに捉えてしまう人もいるかもしれませんが、少なくとも『時をかける少女』の細田監督はそうではありません。「中井は坂がきれいな街で、前から目を付けていたんですよ」と言っていたそうです。坂マニアには魅力あふれることに違いないのですね。

そして肝心の屋敷ですが、先生が建設に当たってたくさんの心血を注いだだけあって、こじんまりとしながらも、京風と民家風の特色がうまく調和した佇まいがとっても素敵で、一目惚れしました♡

 

 

『時をかける少女』の真琴の自宅のモデルもこの屋敷でした。ただ、作中とは相違なところが多いので、興奮する気持ちは中井商友会ほどではないのかも。

 

 

いかがでしょうか?

 

都心には近くてアクセスがいい。それと同時にせかせかした都会の空気感から一歩引いて、一息つくことができる

そんなメリハリを付けやすい柔軟さが「中井」の大きな魅力であり、休日に池袋や新宿で思いっきりグルメや映画を楽しみ、普段仕事の終わりにおっとりと過ごしたい人には、理想的な住む町なのかもしれません。

大型ショッピングモールや娯楽施設がなく、飲食店も割と少ないですが、その代わり、昭和の香りが色濃く残り、穏やかで治安がいい。そして何より、水と緑が育んだ悠長な染めの文化が深く根付いており、今でも年に一度の「染の小道」を通して、その職人の精神と技術を次の世代にバトンを渡そうとしています。

コロナ禍などがあって不穏な世の中となっていますが、このような過去と現在、人と人を結びつける素敵なイベントは、来年も再来年も、いつまでも続いてほしいなあと心から願わざるを得ません。

 

アクセスのポイント

 

 

・【西武新宿線】と【都営大江戸線】が乗り入れており、JR山手線が走っている「新宿」と「高田馬場」、そして「六本木」などは乗り換えなしで行けます

・徒歩約10分圏内の駅は「落合」(4分)・「下落合」(10分)・「東中野」(11分)と3つもあり、それらの駅で買い物や外食をするほか、【東京メトロ東西線】と【JR中央線】も気軽に利用できます

・自転車があれば、「高田馬場」や「池袋」、「新宿」に行くのもとても楽チン。

 

 

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