都会暮らしと自然暮らし
両立するのは夢じゃない

 

ーー自然が大好きで、本当は自然に近いところに住みたいのに、仕事のこともあるし、田舎移住などそう簡単にはできない。

そう悲嘆する声が私の周りでちょこちょこ聞きますが、自分もそういう残念な気持ちを抱えて都心に住む一人でした。

でも実は、ド都心の東京23区にも、別世界のように感じる、自然が広がる秘境が存在するのです!

しかも「秘境」と言ったら、大体”交通不便の奥山”というイメージが先行しがちですが、そんなこともなく、なんと「渋谷」には電車20分しか離れていなくて、最寄り駅からは徒歩5分程で着いちゃうアクセス抜群なスポットです!

それは、このシリーズの第二弾としてご紹介したい「等々力渓谷」です。

そんな場所本当にあるのか?と、自分も最初はちょっと信じられない気持ちでしたが、実際訪れてみると、確かに穏やかながら特に不便は感じない町でした。

スーパーはやや高級志向の「成城石井」(写真・上)からコスパも品揃えもいい「スーパーバリュー」(写真・左下)など4軒程あって、駅を挟んで南北に伸びる「等々力商店街」も飲食店・お惣菜屋さんから信用金庫・ドラッグストアまで生活に役立つお店・施設が軒を連ねていて(写真・右下)、駅前では用事を一通り完結させちゃう印象です。

▲駅前の「ローソン」にはなんと野菜コーナーやコミックコーナーも!

▲周りに畑が点在しており、野菜の直売所もあって、新鮮で美味しい旬の野菜が毎日のようにいただけます。

▲美味しいお店も点在。駅から徒歩3分の「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」は言わずも知れたスイーツの百名店。芸術品のように凝ったケーキやパフェは病みつきになるほど風味がよく、自分へのご褒美にぴったり。

 

いよいよ本題!
さあ、東京23区唯一の渓谷へ

 

武蔵台地の南端には、谷沢川に横切られ形成した渓谷があります。川が10万年かけて徐々に侵食することで形成したという説もあれば、人工的に開拓されたという説もあります。

どちらにせよ、都心にあるなんて想像できない、奥ゆかしき自然風景は、訪れる人々の心を鷲掴みしていること間違いなし。

前述の「成城石井」の脇を曲がって少し進むと、渓谷の入口の一つでありシンボルともいえる「ゴルフ橋」が見えてきます。

「ゴルフ」と聞いてぴんと来ない方もいらっしゃるかと思いますが、かつて近くにゴルフ場があったことでそう呼ばれているだけで、ゴルフと直接関係はないそうです。当時は木造の橋でしたが、1961年(昭和36)に現在のアーチ銅橋になったとか。

真っ赤の橋は周りの景色とうまく溶け込み、どの角度から見ても絵になるので、パシャリ連発しちゃう方がよく見受けて、自分も前に進むまで結構時間がかかっちゃいました(笑)

下を望むとこんな感じ。静かに流れる川沿いを歩いていると、普段の悩み事やストレスが吹っ飛ばされていき、心が澄んでいきます。

遊歩道は基本整っていますが、水たまりの箇所はいくつかあって、特に今この季節は銀杏の落ち葉などで滑りやすくなったりしているので、しっかりとした靴を履いて訪れるのをおススメ。

▲高低差があるので、夏でもひんやりとした渓谷。秋冬の防寒対策をちゃんとしておいてくださいね。

渓谷は全長1キロで長いとは言えませんが、あちこち生い茂っている種類豊富の草花は四季折々の表情を見せてくれていて、ゆっくり見回りたいと思うし、何回行っても飽きません。

百舌鳥などの野鳥や蝶々、魚、小動物も種類多く棲息していて、まさに親子で自然に触れる絶好のスポット。

もう一つ大きな見所は、春の桜と秋の紅葉

紅葉は先週も先々週も見に行きましたが、緑と黄色と赤のグラデーションが渓谷を彩る景色ははっとするほど美しく、見惚れてしまったものの、地元の方によると、まだ一番綺麗な時期を迎えていないらしい。

桜の開花時期も紅葉の色づき時期も、その年の気温変化によって前後するもので、休みの日しか行けない観光客は、どうしても訪れる時期が早かったり遅かったりしてしまい、うっかりすると、見逃してしまいます。距離のこともあるし、多くとも3、4回しか見頃に近づく変化が見届けられません。

そう考えると、やっぱり思う存分に楽しむのに、近所に住むのはベストですよね

左上】わざわざ撮影に来るモデルさんらしい人もいて、それもまた楽しいです。
右下】長い階段を上るところがしょっちゅうあるが、雰囲気がよく奥山にいるような感覚になります。
】こんな素敵な景色、大切な人と一緒に見ると、幸せな気分が倍増しますよね(^^♪

 

「非日常」の美景が、
「日常」に収まる贅沢

 

そしてこの渓谷は、自然風景が素晴らしいだけじゃない。こじんまりとしていますが、横穴古墳や由緒あるお寺、書院のある日本庭園など、意外にも見所満載のスポットがぎゅっと詰まっています。道理で1999年(平成11)に約3.5ヘクタールのエリアが東京都名勝地と指定されているんですね。

遠くまで行かずとも、唸らせる自然風景から由緒ある歴史スポットまで、素敵な「非日常」を普段の「日常」から満喫できるのは、ここの住民ならではの特権✨

そのなかで、歴史が平安時代まで遡れる関東三十六不動尊霊場のひとつである修験場「等々力不動尊」こと「滝轟山明王院」は、近所にあったら足繁く通いたい筆者の一押しスポット。

】勝負運・学業成就・子育てなどのご利益を授けてくれるお寺で、参拝客が後を絶ちません。
左下】春は咲き誇る桜が訪れる人々を魅了していますが、秋は黄色い絨毯のように敷き詰めた銀杏と燃えるような真っ赤な紅葉が映えます。
右下】お寺に舞台が設置されているのはめったに見ない気がしますが、木造の建物がとても味があって、そこから望む渓谷の景色はなお素晴らしいです。

▲個人的に、入口の展望台から眺める景色はより痺れるもの。まるで自分が絵はがきに入り込んだかのように感じて、ただただ周りの紅葉の絶景に圧倒されます。

それと隣接する「不動の滝」は、周囲に轟き渡った水の音が等々力(とどろき)の地名の由来になっていると伝えられています。

今の静かに流れ落ちる細い滝を見ると、ちょっと想像しがたいですが、昔は滝修行に各地からわざわざ足を運んでくる人が多かったそうです。その光景に思いを馳せながら見ていると、歴史の重みを感じて、なんだか感慨深い気持ちがこみ上げてきますね。

ちなみに、渓谷の中には30か所以上の「湧水」が湧きだしていて、「東京都の名湧水57選」にも選定されているそうです。

 

疲れてきたら
ちょっと一息付こう

 

山奥の渓谷と違って、ここはすでに「公園」となっているので、小休止できるベンチなどがそこかしこに設置されています。歩き疲れてきたらいつでも腰を掛けられるのはありがたいですね。

(川沿いの大きな石に座って持参のお弁当を食べたり、景色を興味津々に味わったりするカップルもよく見かけます)

】前述の「不動尊」の境内にある休憩処「四季の花」でお茶やコーヒー、ソフトクリームでリフレッシュすることもできますよ。ゆったりとしたパラソル付きテーブルでいただくのもいいし、
】あちこち設けられているベンチに座って綺麗な景色を享受しながらいただくのも一興でしょう。

もしくは、渓谷と直結するイタリアンレストラン「OTTO」で食事するのもGood。午後2時でも行列ができちゃうほどの人気店なので、行くなら時間の余裕を持っておきましょうね。

ちょっとした甘味で小腹を満たしたいだけなら、「不動の滝」のすぐそばにある甘味処「雪月花(せつげつか)」をおススメ。鯉がのんびりと泳ぐ池が付く庭を含め、伝統的な「和」の雰囲気がとても素敵で、心が落ち着きます。

】繊細で上品な味のあんみつ(500円)はとっても美味しく、癒されます。おしるこや抹茶、甘酒(メニューは季節ごとに変わるようです)、土日限定のくずもちもありますよ。
】屋外のベンチ席と屋内の座敷席が選べます。窓際の席から川が一望できて最高!

また、1973年(昭和48)に著名な造園家によって造られた「日本庭園」の中に、渓谷の紹介パネルなどが展示されている書院がありますが、なんとお水やお茶が無料でいただけます

(紙カップを捨てるゴミ箱も置いてあるなんて、なんという心配りが…!)

】特に今のような冷え込む日には、暖かいお茶を飲みながら縁側で日向ぼっこするのは、何とも言えない幸せ💛
左下】和風の書院建物は庭園よりも歴史が長く、1961年(昭和36)に建築されたもの。
右下】その隣に日当たりのいい芝生広場があって、ピクニックしたり寛いでいる子ども連れのファミリーで賑わっています。

そのほかに、みかん園や雰囲気抜群の竹林、池などもあって、ちょっとした散策コースとして利用するのもいいですよ。

そして歴史好きなら興奮しちゃうはずの「横穴古墳」も見逃せないポイント。

いくつかの横穴は7~8世紀の古墳時代から奈良時代末期にかけて構築されたもので、ほとんどは跡しか残っていなく、一番よく保存され、完全な形としてしっかり留めているのは玉沢橋付近にある「3号横穴」のみ。

ドキドキしながら近寄って見てみたら、予想したより穴がこじんまりとしていて、3体の遺体が置かれていたと考えると、昔の人間って一体どれほど小柄なのかって不思議でしょうがなかったです。

▲構築当時はこんな感じだったようです。

「有力の農民=お金持ち」のお墓だったようなので、言うまでもなく豊富な副葬品も入っていました。今は全部博物館に移されているそうですが。

 

あら不思議!
住宅街にも古墳が!

 

もうちょっと見たい方はご安心を。さらに大規模な古墳は、渓谷を抜けた住宅街に佇む「玉川野毛町公園」のなかに聳え立っています。

それは「野毛大塚古墳」という5世紀初頭に築いたとされ、2016年から国の重要文化財に指定された大型古墳ですが、上空からは帆立貝のように見えることから、「帆立貝古墳」と呼ばれているそうです。

プチ登山のような気分で登れるほどデカくて立派な墳丘で眠れる人物って、紛れもなく千何百年も前の古き時代に大きな権力を握った偉い人ですよね。調べてみたら、当時の政治の頂点に立つヤマト王権とつながりのある大首長だったとか。うん、納得!

】高さ10mの墳丘を登ったら、頂上からこども広場や野球場、テニスコートが一望できます。開放感のある眺めは気持ちがよかったです。
左下】公園の入り口に古墳時代の風情を感じさせる銅像が。
右下】広々とした公園は整備されていて、地元の方に親しまれています。

 

地域の絆を強くするイベントで
みんなで盛り上がるのも楽しい

 

渓谷の感動的な美景をいつまでも存続させるため、地元住民による「等々力渓谷保存会」という組織が日ごろの清掃活動のほかに、たけのこ掘りやみかん狩り体験など、渓谷の素敵さを肌で感じられる面白いイベントも展開しているようです。

訪れた日に、地域の福祉施設を知ってもらうための「玉川福祉フェスティバル」というイベントも区民会館で開催され、その場で自分だけのオリジナル缶バッチを作ったり、ひも釣りゲームを愉しむなど、多彩なコーナーが設けられていて、小さな子どもも大喜びしている様子。

そしてその翌週に、「玉川野毛町公園」の隣に「オープンパーク」というイベントがあると知って、普段一般公開していない公園拡張予定地で行われるせっかくの機会だったし、面白そうなので、また足を運びました(^^♪

】用意されたガーデンチェアとテーブルを借り出し、好きな場所で一面に染まった鮮やかな黄色を眺めるのは、至福のひととき。
左下】キッチンカーが出ていたので手ぶらで行ってもOK。
右下】この公園で渓谷と野毛町公園をつなげる予定だそうですが、公園づくりに住民の皆さんの意見を集めたいということで、「池を作ることに賛成?反対?」など、色々なアンケート調査も実施していました。

実現できるかどうかは別として、このように住民たちの気持ちを大事にしたい、みんながくつろぐ公園をみんなで作って行きたいというスタンスは、とても素敵ですね。

▲「公園の水や自然の循環を考える」をテーマにしたパネル展示もあったが、そのなかで地球にやさしい「コンポスト=堆肥(compost)」という概念は、一番刺激を受けました。

ざっくり言うと、家庭で作った生ごみなどを活用し、野菜などを育てる「肥料」に変えて、ごみを減少させる仕組みです。

種類はいくつかありますが、マンションの住民だと、ファスナー仕様の専用バッグがいいと、現場のスタッフが教えてくれました。生ごみを入れてかき混ぜるだけなので、とてもラクだし、臭くないし、実際に持たせてもらったら意外と軽かったので、確かにありかも!と思いました。

満タンになったら返送すればよくて、そのお土で育てた野菜は後日送ってくれるとか、いかにも楽しい仕組み!他の市町村でもやっているらしいので、気になった方はネットで調べてみてくださいね。

さつまいものつるでクリスマスリースを作るとか、公園内で宝探しなど、親子で楽しめるプログラムも。子どもたちが真剣な眼差しで取り組んでいる姿はほっこりしますね!

そして体の凝りをほぐす「椅子ヨガ」も2回分けて行われていました。青空の下でヨガをするって、こんなにも気持ちがいいものなんだと、感動しちゃいました。

セレブが住む高級住宅街のイメージが強い世田谷区にある「等々力」。意外にも自然の恵みが溢れ、貴重な史跡やわびさびの感じられるスポットが集まる街で、人と人のつながりが強く、暖かい街でもあります。

(前述の散策ツアーのガイドさんも椅子ヨガの先生も、そしてほかのスタッフさんもみんな、地元のボランティアだったとのこと)

オープンパークの開催は今回は2回目で、令和4年の来年もまた不定期に行われるそうです。正式に開園する令和5年末になると、さらに老若男女問わず親しめるスポットに進化すること間違いなし。

そういう変貌も含めて、色々楽しんでいけそうですね(^^♪

 

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