【木が足りない?】
“ウッドショック”という言葉が今、住宅・不動産業界を騒がしています。この言葉は、1970年代に起きた中東の戦争等の影響などから原油の供給が逼迫し、原油価格が高騰した “オイルショック”の木材版を意味しています。実は今、木造住宅を建てるために必要な木材が不足しているのです。コロナ禍において、2020年の日本の新築住宅の着工件数はリーマンショック並みに大幅減少しました。こうした背景から木材業界が木材の輸入を減らしたのですが、2021年に入り日本における住宅業界の回復が見えてきたこともあり、いざ輸入量を増やそうとしたものの、輸入先の米国は変わらぬ株高や、金利の低下によってリーマーショックが起きる前の水準にまで住宅事情が回復し、中国もいち早くコロナ禍からの脱却に成功したことで木材の需要が大きく伸びるなど、日本が輸入できないほど木材の争奪戦になっています。

【日本は木材たくさんあるのでは?】
日本の森林面積は国土の3分の2もあり、資源としては豊富です。しかし、その半分近くが戦後の大量伐採からの人工林であり、人工林が育つまでの間に割安な輸入材に頼る産業構図が出来上がってしまったのです。ちなみに、日本の木材自給率は2019年で37.8%と近年回復していますが、最小だった2002年は18.8%まで下がっていたのです。その結果、在来工法で使われる柱のうち国産は約4割にしかなく、梁(建物の水平方向に架けられて床や屋根の荷重を柱に伝える材)に至っては約1割しか国産材は使われていません。つまりは、国内の木造住宅のほとんどを輸入材に頼っているということになります。

【いつになったら輸入材が入ってくるの?】
こうした情勢から、現在分譲されている建売住宅や注文建築では、工期を明らかにしていないケースが多くなっています。また、一旦工期を設定しても注釈として再延長が可能という文言も入っています。つまり、先が読めないというのが住宅・不動産業界の本音なのです。業者によっては、輸入材が手に入らないので国産材で手当しようと模索しているところもあります。しかし、元々割高とも言われる国産材がこの状況でさらに高騰していますので、仮に手当できたとしてもそのコストを誰が吸収するのか?という問題が生じてきます。多くは、施工側が負担しようとしていますが、今後の情勢によっては追加料金を求められたり、予め高めの料金設定で契約をせざるを得ないことも起きてくるでしょう。

【改めて注目される中古住宅】
こうした流れは、必然的に中古住宅への需要増加につながっています。中古住宅を購入してリノベーションするという方法であれば、かなり大掛かりな工事であってもそれほど多くの木材を必要としません。今後も、この流れは続くと見られていますが注意すべき点もあります。それは、中古住宅の売主の多くは買い替えで次の住宅を契約しています。つまり、買い替え先の完成が先延ばしになる場合、それに比例して売却物件の引き渡しも先になる可能性があるということです。ぜひ、物件選びに際しては売主の状況についてもきちんと確認して欲しいと思います。