現在全国に36か所しかない
国の特別名勝の一つである六義園。
「義」という文字がついているためか、
名前を聞いて真っ先に思い浮かんだのは
「忠義」に熱い侍のこと。
でも実は「六義」はそのちょっと硬い印象とは裏腹に
繊細で美しい漢詩・和歌からつけられたものです。
中国の古代詩に、
「風・賦・比・興・雅・頌」といった六つの分類法があるが、
平安前期の歌人であり『古今和歌集』の撰者でもある
紀貫之が「和歌に六義あり」としており
それを和歌の六種の分類「六体」に転用したという。
そしてこの六義園の生みの親・
5代将軍徳川綱吉の重臣である柳沢吉保が
『万葉集』や『古今和歌集』に詠われた風景をベースに
自ら7年の歳月をかけ、設計・造園したので
まさに「詩歌の庭」なんですね。
それだけでなく
仏教や儒教、日本神話に基づいたスポットも散見しており
柳沢吉保の学問と教養が垣間見える庭園でもあるので
見回れば見回るほど奥深くて面白いんです。
▲コロナ禍で何か月間休園になってしまったが、やっと6月4日より再開。※ネットでの事前申込が必要
▲ネットで整理券を申し込んで、チケット売り場で支払う形となっている。※paypayも利用可能
▲大小二種類のリターン式コインロッカーは入口のところにあり、荷物を預けられるので、身軽に散策できる。
そんな六義園の見所を3つにまとめてみたので
ちょっとチェックしてみましょう。
新宿御苑のように壮大な敷地を持つわけではないとはいえ
六義園に2万7千坪、つまり東京ドームの約2倍もの広さがあります。
最初はやっぱり足に任せ、園路をぶらぶら。
その心に沁みる「和の美」と緑あふれる雰囲気を感じ取るのがおすすめです。
春には流れ落ちる滝を彷彿とさせるしだれ桜
初夏には園内を彩り豊かにするつつじ
秋には錦織り成す絶景を見せる紅葉
冬には趣のある雪吊りや梅
手入れが丁寧に行き届いている園内には
季節ごとに癒しになる自然が広がり
歩くだけで都会の喧騒や疲労困憊を忘れ
気分が晴れてきます。
▲所々に園内マップが置かれており、自分の居場所が確認できるので、迷子にはなりません。
▲園路の両脇に高い木立となるエリアもあって、森林浴を浴びるような感覚で気持ちがいい。
▲都会にいるとは思えぬ美しさ。静寂が占めている池や林はまるで別世界のよう。
▲ちょっと曇っても撮った写真は絵になる。
▲雰囲気が異なる橋も見所の一つ。二枚の大岩で作った形が独特な「渡月橋」も素敵な撮影スポット。
▲園内は手入れが丁寧にされており、庭木の剪定などもまめに行われているようだ。
🍃さくら
園内にソメイヨシノ、サトザクラ、エドヒガンなど約40本の桜が植えられています。
中でも園内のシンボルツリーともなっている、しだれ桜が必見です。
正門から少し足を進めたことろにある「内庭大門」をくぐると、高さ約13m・幅約20mの巨木が見えてきます。脇にあるほかの3本のしだれ桜とともに、春になると薄紅色の滝のように咲き誇っており、目を愉しませてくれます。
【見頃】3月中旬~4月上旬 ※ライトアップあり
🍃つつじ
昔この近辺に、六義園をはじめ、武家屋敷の広々とした庭園の手入れをする庭師たちが住む染井村があって、そこからつつじの園芸ブームが始まったそうです。今でも古品種も含め、約30種類1,000株のつつじが園内に植えられています。
園内で一番高い標高35mの築山「藤代峠(ふじしろとおげ)」は江戸時代には右手に富士山が見られることから、頂きは「富士見山」と呼ばれていたが、現在でも庭園の景色が一望できる素敵なビューポイント。
つつじの季節に、山なりの斜面を埋め尽くす色とりどりのつつじを眺めるのに絶好のスポットでもあります(紅葉の季節も綺麗ですよ)。
将軍綱吉が腰掛けたと言い伝えられている石「五代将軍腰掛石」に一休みし、江戸城に君臨する大名気分を味わってみるのはいかがでしょうか。
【見頃】4月中旬~5月上旬
🍃もみじ
明治時代に荒れ果てた六義園を買い取り、整備した岩崎家が建てた亭で唯一現存する「つつじ茶屋」付近は紅葉に囲まれており、紅葉のシーズンになると、赤・黄・オレンジのグラデーションは茶屋やアーチ型の「山陰橋(やまかげのはし)」、澄み切った池の水と相まって、とても美しいです。
ちなみに、この「つつじの茶屋」の柱と梁に使った材木は、なんと成長が極めて遅く、集めるのが非常に難しいと思われるつつじの木です。それができる岩崎家の財力はなかなかのものですよね。さすが三菱の創建者!
【見頃】11月下旬~12月上旬 ※ライトアップあり
一番名高いしだれ桜とつつじ、紅葉のほかに、フジや紫陽花、彼岸花、椿など、一年を通して様々な花々も咲き、訪れるたびにその時にしか見られない風情で魅せてくれます(^^♪
園内の環境を把握してきた二周目から
見所の由緒や解説の書いてある看板を読みながら
一つ一つの風景を見返していくのがいいでしょう。
そうすると、新たな発見ができ
より一層楽しめると思います。
たとえば、
六義園は大きな池「大泉水」を中心に「八十八境」という
紀州(現在の和歌山県)の「和歌の浦」など
当時諸国の名勝にちなんだ88の景観を設けた「回遊式築山泉水庭園」だが、
築庭当初、この辺は池も山もない平坦な武蔵野で
造園者の柳沢吉保が築山を作り
池を掘り、千川上水の水を引いて大泉水にし
ゼロからここまで起伏のある豊かな景色に造り上げたそうです。
まさに「鬼斧神工(きふしんこう)」なんですね!
八十八境は、今や32か所しか残っていないのですが、
庭園が完成した1702年から300年以上の間に
江戸を襲った数々の火災や関東大震災、東京大空襲を免れて
今でもこのように
当時将軍綱吉も魅了され、
58回も訪れたと伝えられている景色を見せてくれるのは
本当にキセキとしか言えません(当時の茶屋などの建物はほぼ焼失されてしまいましたが)。
それを思うだけで何とも言えない感動がグッとこみ上げますね。
▲大泉水の真ん中に造られた「中の島」にある「妹山(いものやま)」と「背山(せのやま)」は『古今和歌集』で描いた男女の仲を象徴し、近くに「鶺鴒石(せきれいいし)」もあることから、子孫繁栄の願いを込められていると思われる。
▲説明札の示した昔の絵や写真と照らし合わせて風景を眺めるのも楽しい。
▲入口のあたりにあるパネルコーナーに、柳沢吉保の造園から、岩崎家の所有になる経緯、昭和13年(1938)に東京市への寄付までの歴史がわかりやすく記されている。
石一つとっても凝っており
陽射しの有無や強弱によって
違う面影を見せてくれる。
こんなに風情豊かな庭園なので
三周目からはじっくりと
その変化に富んだ景観を吟味したいですよね。
うれしいことに、
園内の至る所にベンチが設置され、
見た目に侘び寂びが感じられ
建物自体も見ものとなっている
茶屋や休憩所も点在しています。
前述の「つつじ茶屋」のように紅葉に包まれる
幽玄な美が漂っているスポットもあれば
甘いものや飲み物、食事が楽しめる場所もあります。
日常を忘れさせてくれる美しい景色を眺めながら
美味しいものなどでゆっくりリフレッシされるのは
最高なひと時ですよね。
▲随所にベンチも設置されており、歩き疲れてきたら、いつでも腰を掛けて息を抜くことができる。
🍃滝見茶屋
私個人の一押しは岩崎家によって建てられた東屋「滝見茶屋」です(※現在のものは復元)。
茶屋とはいえ、お茶などは売っていませんが、濃淡のある爽やかな新緑に包まれ、右に優美なアーチ型の「千鳥橋(ちどりのはし)」が、左に岩の間から流れ落ちる小さな滝と「水分石(みずわけいし)」などの石組が見渡せ、涼しげな渓流の水音も楽しめるので、雰囲気も眺望も申し分ないです。
水に浮かぶ趣のある石組を渡ったりすると、進むにつれ風景が変わり、それもまた楽しいです♪
▲味のあるカーブを描いた千鳥橋だが、右が池周りの「海の景色」、左が鬱蒼とする「山の景色」となる。
▲水分石によって三つに分けられている流れが小さな滝になり、心地良い水音を響かせる。
▲千鳥橋から望んだ茶屋もなお美しい。
▲このあたりに亀や鯉が生息しており、そののんびりと泳ぐ姿を眺めるだけで癒される。
🍃吹上茶屋
元々は岩崎家が熱海の別荘にあった茶室で(※現在のものは再建)、湖畔から池や中の島を眺めたり、つつじや紅葉を鑑賞したりのんびり過ごすことのできる人気な休憩スペース。
美景を目前に、温冷選べるまろやかな抹茶と六義園に咲く花がモチーフとなる上生菓子のセットを楽しむのも、風雅なひと時ですよね。
季節の羊羹や六義園オリジナルのお菓子・グッズも色々売っているので、ぜひ立ち寄ってチェックしてみましょう。
🍃休憩所兼売店
こんぶ茶・コーヒー・ジュース・甘酒など種類豊富な飲み物をはじめ、みそ餅・とろろてん・ようかんなど多種多様な和菓子、そして夏場に嬉しいかき氷まで売っており、食事もできる休憩所は、まさにオアシス的な存在。
可愛いグッズコーナーも設けてあるので、自分の記念に、もしくは大切な人へのプレゼントに買うのもいいですね。
目の前に「中の島」や「蓬莱島」、「吹上浜」が見える素敵な眺望スポット「出汐湊(でしおのみなと)」があって、優雅なひと時を過ごすことができます。
▲不老不死の仙人が住む「蓬莱島」をモチーフにした奇岩。明治時代に岩崎家が作ったらしい。
🍃心泉亭(有料施設・事前予約が必要)
かつては池の中心部に流れていた湧泉があって、「心の泉」と名付けられた「心泉亭」は、今は集会場と、季節限定のお茶や和菓子が味わえる雰囲気抜群の茶室となっています。
いかがでしょうか?
ぐるっと一周するのに
3、40分と、それほど時間がかからないそうですが
造園当時から小石川後楽園とともに江戸の二大庭園に数えられた
景色の美しさと居心地の良さに足を止められ、
ついつい何時間も長居してしまう六義園。
岩崎家による赤レンガ造りの塀が醸し出した
独特の風情も含めて、内外共に楽しめる庭園を、
その凝縮された「和の美」を
ぜひ自ら実感してみてください。
🍃アクセス
JR山手線・東京メトロ南北線「駒込駅」から徒歩約7分
🍃開園時間
9:00~17:00 (入園は16:30分まで)
※休:年末年始
🍃入園料
※入園するにはネットで事前申し込みが必要
一般 300円
65歳以上 150円
※小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)
※身体障害者手帳、愛の手帳、精神障害者保健福祉手帳または療育手帳持参の方と付添の方は無料)
※無料公開日:みどりの日(5月4日)、都民の日(10月1日)
🍃その他チケット
【年間パスポート】 ※4回以上訪れるとお得
一般 1,200円
65歳以上 600円
【都立9庭園共通年間パスポート】※六義園のほか、浜離宮・旧芝離宮・小石川後楽園・旧岩崎邸庭園・向島百花園・清澄庭園・旧古河庭園を指す
一般 4,000円
65歳以上 2,000円
【六義園・旧古河庭園共通入園引換券(園結びチケット)】 ※使用期間制限なし
一般 400円
65歳以上 200円
☎03-3941-2222
🌎https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/about031.html
Twitter:https://twitter.com/RikugienGarden
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